これは極東にある、とある島国のお話です。
その国は古くから、大国とは海で隔てられたこともあり独自の文化を保った国でした。
豊富な水資源と、森林、鉄鉱石があることから、製鉄技術を中心に高い技術レベルを有し、儒教の教えを守る誠実なまじめな国民はよく働き、世界史上でも1,2位を争う経済成長を100年足らずの間に二度もなし遂げたこともあります。
また軍隊も持たず、過去60年以上に渡り侵略戦争をしたことがない、平和を愛するこの国は、長らく世界の憧れでした。
しかし、人に、会社に寿命があるように、その国は今寿命を終えようとしています。
それ自体は嘆かわしいことではありません。
過去数百年、この国はスクラップ&ビルドで復興してきたのです。そして、今回も。
高齢者問題、人口減少、隣国の新帝国主義、グローバル企業のIT攻撃、エネルギー、環境問題、貧富差の拡大、自由民主主義の限界。
まさに今時代が変わろうとしている、、、そんな局面を迎えています。
そして、それは起こりました。
2011年、3月11日。
その小さな島国の東部地方を中心に巨大地震が起こりました。
巨大津波が起こり、数万人の方が命を失い、多くの街が消失しました。
時代の変わり目に発生した巨大災害を前に、全国民が衝撃を受けました。
とくに津波に襲われた沿岸地域の人々は、まさに絶望の中に居ました。
そして数年後、巨大津波にが襲ったエリアには津波の爪痕は残るものの、
”元どおり”以上の活気を取り戻したのです。
きっかけは、一人の初老の政治家のつぶやきでした。
「復興ではなく、新しい国を作ろう」
震災直後、多くの人は「1日でも早く、元の暮らしを取り戻したい」と口にしました。
ですが、元の暮らしとは、国全体が抱える問題の多くを静観する茹でガエル生活のことです。
全てが流された今だからこそ、元にではなく、新しい仕組みを作ろうと、その政治家は言いました。
そして政治特区の導入を皮切りに、その被災地は世界でもっとも先進的な国に生まれ変わったのでした。
・政治の意思決定・実行速度を早めるための道州制導入・政治特区の制定
・新しい道路は全て自動運転に対応したセンサー付きで、世界で最初に自動運転が実用化されました
・災害支援金ではなくベーシックインカムの導入
・ベーシックインカムが闇金ルートに流れないよう、紙紙幣の廃止&QR決済・ブロックチェーンの導入によるキャッシュフロー管理
・移民の積極的受け入れ
・農地・漁港組合を解体し、IT化・ロボティクスの推進
その国が抱えていた問題を、抜本的に改革するようなこれあの法律の制定・実行は、
ねじれ国会や、有権者の多くが高齢者という中で議論が進まず膠着状態となっていました。
しかし、全てを失った被災者の多くは「ええじゃないか。」と、その初老の政治家の見せた幻想にベットしたのでした。
結果として、滅びようとしていたその国は、今世界での輝きを取り戻し、
21世紀の新しいイデオロギーの発信地として注目を集めています。
おわり。
ーーーあとがきーーー
あけましておめでとうございます。
ジラフです。
久しぶりに記事を書きました。
私地震3.11で大事なものの多くを失っており、今だに思い出さない日はないのですが、
当時は「復興!復興!元どおりに!元どおりに!」と口にしていました。
しかし、復興した街並みを見ても、以前と同じかそれ以上の閉塞感が残っており、
どうすべきだったのか、友人たちと議論する中で上のような夢想をしたので、
初夢のような記事を書きました。
もう時計の針は戻らないですし、復興に尽力いただいた方々の苦労は計り知れません。
あの日からの日々を否定するわけでは決してありません。
次、どこかで大きな災害があった時、
このような議論が出来るよう、記事を書きました。。。